【複業実践者インタビュー】「手仕事×IT」で職人を未来へ繋ぐ。「複業美容師.com」管理者/馬渡 俊

複業実践インタビュー

フリーランスや複業・副業をいう働き方が社会に浸透してきていますが手仕事系の技術者の理美容師にもその流れが起き、正規雇用、業務委託に次ぐ第三の働き方として注目を集めています。

「複業美容師.com」はそんな時代背景を元に多様な働き方の理美容師を紹介しつつ、働き方で人を繋ぐコミュニティサイトを運営しています。

ご自身もフリーランス美容師として活動されている管理者の馬渡俊さんに手仕事系技術者の複業・副業について伺ってきました。

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ーー複業美容師.comとはどんなサイトですか?

複業美容師.comはFacebookグループを中心に活動し、理美容師やネイリスト、アイリスト、エステティシャンなど理美容業界の手仕事系技術者で施術による売上以外の方法で収入を得ている方を紹介したり、個々で行なっている活動でコミット出来そうな方同士を繋ぐ活動をしています。

昨年の10月にサイトをリリースしましたが、有難いことに半年でグループ参加者が300人規模になっています。今の所、フリーランスや理美容室経営者の参加者が多いですが、今後は伝統工芸の職人さんや菓子職人さんなど幅広い業種の職人さんとそんな職人さんと関わりたい方に幅広く参加して頂きたいですね。

ーー馬渡さんは他にも活動しているそうですが?

はい。フリーランス美容師向けのシェアサロンの運営に携わっていたり、理美容向けのブランディングやコンサルの仕事をしています。

ーー馬渡さんも複業しているんですね。シェアサロンというのはどういったサロンですか?

WeWorkの様なシェアオフィスだと考えていただけるとイメージが近いと思いますが、美容室のスペースを複数の美容師で共有して使用している美容室形態で、主にフリーランスで活動されている美容師が使用しています。正規雇用や業務委託契約とは違い、各自のワークライフバランスに合わせ自由に使用出来ますし、メニューや料金設定も各自で自由に行います。サロンに縛られずに活動が出来るので美容師以外の活動をしている方もいっぱいいます。

ーー理美容業界もフリーランスの働き方が出てきているんですね

美容業界は〝個〟の時代です。ほとんどの店舗が5名以下で運営する小規模事業やオーナー一人で切り盛りする個人経営が多かったのですが、50万人の美容師人口に対して年々店舗数が増え25万件になっています。コンビニよりも美容室が多くなりオーバーストアと人材不足で従来型の美容室経営では立ち行かなくなっています。
そこにSNSの発達で店舗集客から個人集客へとシフトしたこととノーリスクで好立地の施術場所が手に入るシェアサロンの出店により、店舗を持たずに活動するフリーランスがここ2年で飛躍的に増加しました。従来型美容室経営では、美容師の拘束時間が長く、低収入(店舗利益大)でしたが、自由な選択が出来るフリーランス美容師の台頭で拘束時間が短く、高収入(店舗利益小)という全く逆の環境が手に入る様になりました。これにより美容師も経営者も今までのビジネスモデルを見直さなくてはならなくなりました。

ーー理美容業界が転換期に差し掛かっているですか?

これは理美容業界に限ったことではないと考えています。昔は営業成績、理美容師でいうと売上や指名客数、顧客リピート率などが高い事を求められていましたし、高くする事でステータスも得られていました。しかし、その為の犠牲も多く払ってきたと思うんです。経営側も売上が高いのはいい事として更に上を求めるので上限設定って、あまり意識されていなかったのですが、理美容業の根幹は労働集約型の対人サービス業なので、どんな人でも24時間以上は働けないんですけど、それ以上の事を求め過ぎてしまっていたので色んなところに歪みが出てしまって限界だったんだと思います。

ーー理美容業はブラック体質、という声を耳にする事もありますが・・・

カリスマブームだった頃は憧れだったり、お客様を良くしたいっていう良心や善意を基にした考えで「お客様に迷惑がかからない様に、もっとお客様を良くしたい!」ってマンパワーでカバーして成り立たせていた部分が成り立たなくなっていくと善意が基になっているので、何の為に頑張ってきたのか分からなくてなっちゃって辞めていく人がいっぱいいるんですよ。

ーー悲しい現実ですね・・・

そうなんです。本当は一人一人の幸せの形って違うし、考え方や事情も違うので、月収も100万円欲しい人がいても良いし、10万円欲しい人がいても良いと思うんです。だからこそ、自分でアッパーの設定をして、それに見合う働き方をすれば良いと思うんです。

ーーでも企業に属しているとそんなに自由は効かないんじゃないですか?

確かに会社に属していれば会社の方針もあるので合わせる必要はありますが、今の理美容業界は〝個〟の時代なので、所属先を選ぶ選択の自由はかなりありますし、フリーランスという完全に自由な業態を選択することも可能になっています。ただ根幹は手仕事系技術職なので五体満足でないとなかなか従事するのが難しい職業ではあります。

ーーそう考えるとリスクですね

理美容業界の技術者は、身体が動かないと従事できないことやお客様に求められないと技術を披露する(売上をあげる)機会が得られないなど技術力は高くても常にリスクや不安が付き纏う仕事です。その時に大企業ならカバーすることも出来るかもしれませんが、ほとんどが小規模事業者の理美容業ではなかなか難しい問題ですね。

ーーそう考えるとやはり複業は重要になりそうですね。

複業美容師と謳っていますが、本質はリスクの分散だと思っています。企業経営だとある程度、本業で収益を得られてくると多角経営にシフトして本業を補完しつつリスクを分散させますが、理美容業の経営者の方は職人気質の方が多いので、理美容業一本で経営するのが多かったんです。ただ従来型の理美容経営モデルが崩れてきたので最近では多角経営しているサロンは確実に増えてます。リスク分散の多角化は店舗経営にもフリーランスにも大切なことだと考えています。

ーー複業美容師.comでは様々な複業をされている理美容師さんにインタビューされていますが皆さんどんなことをされているんですか?

もう本当に多種多様で(^_^) フリーランスも経営者も様々な方にインタビューしていますが、商品開発や美容学校経営、アートディレクターなどをしている方からカレー屋さんしている方なんかもいました。サイトでは店舗での施術以外に収益を上げているのは何でも複業としているのですが、大きくは二極化しています。元々美容が大好きで理美容業に携わっている人が多いのですが、同じ感覚で〇〇が好きが高じて複業になる場合と理美容×〇〇の意識で理美容業をプラットフォームとして多角経営する場合です。

ーーそう考えると何でも複業になりそうですね

そうなんです!皆さん自由な発想で活動されているのでインタビューさせて頂いているこっちがワクワクしちゃいます。そういう意味では今は理美容業界の複業・副業やパラレルワークの黎明期だと捉えています。まだまだ複業・副業やパラレルワークという意識が理美容業界に浸透しているとは言い難く、既に活動されている方も個々や小規模なものが多いのと手仕事系技術職の労働集約型の延長が多いのが課題になってくると思います。そこの問題点を改善するお手伝いが少しでも出来ればと考えて活動しています。

ーー今後はどのように変わってくると考えているのですか?

理美容業界の技術者の仕事は労働集約型の対人サービス業なので、同じ路線よりwebを活用したIT関係とコミットすると飛躍的に伸ばせると考えています。また個々で複業をすると規模が小さくなってしまいますが、元々の働き方が〝個〟になっている業種なので、個を尊重しつつも個の集合体としてのコミュニティもしくは窓口としての法人が必要になってくると考えています。

ーー発想は理解できました!が、具体的に実現できそうですか?

複業・副業が社会に浸透してきていますが、その業種はITやデサイン関係などwebで完結する仕事が多いと思います。理美容業の手仕事系技術者の強みは、毎月何十〜何百人という顧客が時間とお金を使い施術を受けに来るというリアリティだと思います。これだけネット社会が発達している中で時間とお金を使ってわざわざ足を運んでくれるって凄くないですか?しかも各スタイリストが月に何十人以上の顧客を抱えているんですよ。

ーーそう言われると凄いことですね!!

そうなんです!ただ〝個〟で活動している限りは、この凄さの効力を発揮することは出来ないので〝個の集合〟と〝ネットとリアルの融合〟の2つがこの業界のキーワードになってくると思います。そのためにプラットフォームとして「複業美容師.com」に様々な業種の方に幅広く関わって頂きたいです。春から月一で勉強会を開催するので業種・業界問わず様々な方に参加して頂きたいです。

ーーなうほど、貴重なお話をありがとうございました(*’ω’*)♪これからの「複業美容師.com」も楽しみにしています!

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