2024.02.06
フリーランスが経費をなるべく使いきり利益をゼロに近づけ税金を抑えるという戦略は戦略的に正しいのか?
100の生業を持つ現代版百姓を目指す、破天荒フリーランスのざき山です。
複業メディア「ウィズパラ」では、サラリーマンの方、学生の方、フリーランスの方、問わず、『複業』という、これからの時代の新しい働き方を実現するために必要な知識・ノウハウを発信していきます。
我々、フリーランスはクリエイター・職人であると同時に経営者でもあります。
サラリーマンであれば、会社全体の事は経営者に任せ、自分に課せられた会社組織の中のいち工程・いちポジションの職責をまっとうすれば良い事になりますが、フリーランスであれば経営者目線で自己投資や設備投資、節税など経営面での戦略を立てなければなりません。
個人の場合の所得税は収入から経費を除いた金額に所定の税率を乗じて算出しますが、その税率は所得が多くなるほど高くなる「累進税率」となっています。
税金を低く抑えるという意味では、売り上げを上げつつ、いかに「利益を出さないか」が重要になってきます。
つまり経費を計上しまくって、利益をゼロに抑えれば税金はゼロに近づく事になります。
これがフリーランスの経営者としての戦略として最適解なのか考察していきたいと思います。
利益はすべて設備投資に回す事業主の事例
法人税が0円になったソフトバンクグループの場合
私たちは売上や純利益が多く儲かっている企業は、個人と同様に多額の法人税を納めているはずと思ってしまいますが、実際にはそうではありません。
ソフトバンクグループは、2018年3月期の売上高が過去最高の約9兆1587億円、純利益1兆390億円を達成しています・・・どんでもなく儲かっています。
普通に考えると1000億円レベルの法人税があっても不思議ではありませんが、ソフトバンクグループの2018年3月期の実質的な法人税は、なんと「0円」だったのです。
一体これはどういうことなのでしょうか。
ここでは「純利益1兆円でも法人税ゼロのカラクリ」を見てみます。
ソフトバンクグループはIoT市場の発展を見込んで、2016年に半導体設計大手の英国アーム・ホールディングス社を買収しました。
IoT(Internet of Thingsの略)は、通信機能を備えた「モノ」がインターネットに接続され、遠隔操作したり、AIと組み合わせて問題を解説したりするシステム/技術のことで、アーム社はスマートフォンやタブレットなどのモバイルコンピューティングマーケットにおいて、アプリケーションプロセッサーでは圧倒的なシェアを有する企業です。
ソフトバンクグループがアーム社の買収に費やした金額は、米国スプリント社の買収額約1兆8000億円を大きく上回る、過去最大規模の約3兆3000億円(243億ポンド)でした。
その後、ソフトバンクグループは2018年にアーム社の株の一部をグループ内SVF(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)に現物出資の形で移管しました。
現物出資の場合は、税法上はいったん資産を時価で譲渡し売却代金を出資したものと扱われるので、アーム株の時価評価額が取得価格を1兆4000億円低くなったということで、実際に損失は出ていないのですが、税務上では1兆4000億円の「欠損金」が生じたとされました。
東京国税局は、欠損金のうち4000億円は18年3月期に計上できないと指摘し、ソフトバンクグループも修正に応じましたが、最終的に約1兆円という巨額の欠損金が「損金」に加算されました。
その結果、2018年3月期のソフトバンクグループの決算は、財務会計上は過去最高益にもかかわらず、税務上は赤字となり法人税は0円となったのです。
法人税が0円になったトヨタ自動車の場合
2019年3月期決算で売上高が30兆円を超えた巨大企業「トヨタ自動車」ですが、なんと2009年3月期から5年間法人税を納めていなかったことが、2014年5月8日の豊田章夫社長の記者会見で明らかになりインターネット上でも話題になりました。
同社の税引き前当期利益は、2009年△5,604億円、2010年 2,914億円、2011年5,632億円、2012年 4,328億円、2013年 1兆4,036億円となっており、2009年3月期以外は黒字なので法人税を納められたはずです。
その一つは、2009年に導入された「外国子会社配当益金不算入」という制度。
それは、外国の子会社得た配当の95%は「益金」に算入しないというものです。つまり、税法上の課税所得は外国子会社の配当金の95%分が実際よりも少なくなってしまうのです。
2つめは「欠損金の繰越控除」という制度です。
益金から損金を差し引いて算出した所得がマイナスになったときの金額を「欠損金」と言いますが、企業が青色申告すればその欠損金は翌事業年度以降に繰り越すことができます。
これを「繰越欠損金」と呼び、発生した事業年度から10年間(※H29以降)の繰越しが可能です。
繰越欠損金は赤字の事業年度はそのまま繰り越し、黒字の事業年度で損金に算入できる制度です。
トヨタ自動車は詳細を公表していませんが、海外子会社からの多額の配当金があったにもかかわらず、制度を上手に活用することで5年間の法人税0円を実現したようです。
その他、名だたる企業が法人税負担を極端に低く抑えている
少し前のデータになりますが、2013年3月期および2014年3月のデータで業績が良いのに「実効税負担率」が著しく低い主要な大企業リストです。
1 三井住友FG
2 ソフトバンク
3 みずほFG
4 三菱UFJ
5 ファーストリテイリング
6 丸 紅
7 アステラス製薬
8 みずほ銀行
9 第一三共
10 キリンHD
日本の名だたる企業があらゆる制度上のあらゆる節税選択肢を駆使し、税負担をおさえている事がわかります。
トランプ大統領はほとんど税金を払っていない
ドナルド・トランプ前米大統領が、任期最後の年だった2020年に、経営している事業で大きな損失を計上し、所得税を回避していたことが、20日に公表された納税記録から明らかになっています。
トランプさんはまた、就任後2年間は税務調査を受けていなかったことも判明しています。
また、日経新聞の2021年の「「米富裕層、税金ほぼ払わず」 ベゾス氏らの納税記録暴露」という見出しの記事によると、
「非営利の米報道機関プロパブリカは8日、米アマゾン・ドット・コム創業者ジェフ・ベゾス氏ら富裕層の納税記録を独自に入手したと発表した。
上位25人の合計保有資産価値は2014年~18年に約4010億ドル(約43兆円)増えた一方、連邦所得税の支払額は136億ドルにとどまった。富裕層に有利な税制が格差拡大を助長している」
と主張しています。
いちフリーランスであっても税金を抑えるために利益のほとんどを事業への投資に回すのは戦略的にアリかナシか?
・・・と、ここまで大企業や著名経営者、著名富裕層が徹底して税負担を回避している事があきらかになりました。
どうやら、お金餅になるには、いかに税負担を回避するかが肝になってくるかが重要というのは間違いなさそうです。
では、フリーランス(個人)であっても、税負担を可能な限り避ける経営判断をすることは戦略的に正しいか見ていきましょう。
節税にもいくつか種類がある
ひとえに節税と言っても、控除を賢く使ったり、今までは計上できるとは知らなかった出費を勉強の末に計上できることを覚えたり、家族を雇用したり、法人化したり、利益を削るために資産の購入に充てたり、選択肢によって意味合いや意義も効果も様々です。
ちなみにはじめに断言しておきますが、事業に使用したわけではないお金を経費に計上するなどの脱税と呼ばれる手段は論外ですので絶対やめましょう。
お金が貯まる節税
節税をするためには利益を削る(経費を使う)ことになるため、節税イコール、お金がたまるとは言えません。
無条件でお金が貯まる節税とは、基本的には控除制度を賢く使うことです。
そうすれば、経費を使うことなく利益を削って節税する事ができ、そのまま手元に残るお金は増えます。
- ●青色申告特別控除
- 青色申告は、複式簿記による帳簿付けが義務付けられており、さらに青色申告を始めるためには事前の届出提出が必要。
- ●基礎控除
- 確定申告をする人は誰でも受けられる控除。金額は38万円。
- ●配偶者控除
- 収入が103万円以下の配偶者がいる場合に受けられる控除。控除額は条件によって異なる。
- ●配偶者特別控除
- 配偶者の収入が103万円以上あっても141万円未満であれば受けられる特別控除。控除額は配偶者の収入によって3〜38万円と段階的。
- ●扶養控除
- 扶養している家族がいる場合に受けられる控除。
- ●雑損控除
- 災害、盗難など、生活上の資産に被害があった場合に受けられる控除。
- ●医療費控除
- 1年間に支払った医療費が10万円以上か、所得金額の5%以上になった人が受けられる控除。
- ●社会保険料控除
- 健康保険、年金などの社会保険料を1年間支払った場合、その全額を控除できる。
- ●小規模企業共済等掛金控除
- 小規模企業共済や、個人型の確定拠出年金などに加入している場合、その全額を控除できる。
- ●生命保険控除
- 生命保険や民間の個人年金に加入している場合、一定の金額を控除できる。
- ●地震保険料控除
- 地震や津波などを原因として発生した火災・損壊に対する保険に加入している場合に受けられる控除。
- ●寄附金控除
- 国や地方公共団体、認定NPOに寄付した場合に受けられる控除。
- ●障害者控除
- 自身や扶養家族が障害者の場合に受けられる控除。
- ●寡婦(夫)控除
- 寡婦控除は夫や妻と死別、離婚した場合などに扶養している親族がいる場合などに受けられる控除。
- 勤労学生控除
- 中学高校大学、もしくは指定された専門学校に通う学生が受けられる控除。
所得控除だけではなく、所得税からダイレクトに差し引かれる配当控除や住宅借入金等特別控除などの税額控除もあります。
控除を差し引くか差し引かないかで納税金額には大きな差が出ますので、該当するものがないか確定申告の際は必ずチェックですね。
浪費に向かう節税
たまにべつのフリーランスや経営者のかたとお話しをすると、このタイプの節税をしているお話しをよく耳にしますが、この方法ではたとえ税金を減らすことができたとしても、実際にお金を使ってしまうため、手元にお金は残りません。
税金で高いお金を持っていかれるくらいなら、使ってしまおうという考えですね。
・・・わからなくもないですが。
その出費が、人生を豊かにするための有意義な出費であるならばアリかなと思いますが、高額な接待費や交際費でバラまくなど単なる浪費の色合いが強いのであれば、素直に税金を払った方が良いと思います。
またここでも言いますが、事業とは関係のない出費を経費と計上することは絶対にやめましょう。
資産を強化する節税
いわゆる設備投資にまわして利益を減らして税金をおさえようというのはこちらのタイプですね。
前述の浪費に使ってしまうよりは、百倍有意義な節税手段になります。
ただ、資産価値が急速に目減りしていくような資産の購入、ビジネスに役に立つかわからないうちに行う安易な設備投資は、結局お金をどぶに捨てているのと同じような意味合いになってしまいます。
セールだからという理由だけで、必要でもないアイテムをポチってしまうのと同じような感じですね。
節税するにしても、設備投資は吟味に吟味を、検討に検討を重ねた上で実施するようにしたいものです。
ビジネスを強化する節税
いわゆる研究費へのおカネの投入、自己投資へのお金を投入することで利益を減らし、節税しようというのがこちらにあたります。
著名な大企業の経営者や、賢いフリーランスが行う節税はまさにこちらの節税を実施します。
要はもっとも賢い節税方法ということになります。
税金を減らすことにもなりますし、事業自体をさらに飛躍させることも期待できます。
とくに変化の激しいWeb業界では、自己投資・事業への研究開発費をケチれば、長く活躍することはできないでしょう。
節税への欲が強すぎて事業とは関係のない出費の経費計上に注意!!
これはさきほどもクギを指しましたが、事業とは関係のない出費を経費として計上することは脱税にあたるため、絶対に避けるべき行動です。
ただ、フリーランスは個人と事業者としての境界線があいまいになっているため、完全に事業用の出費、完全にプライベートの出費というふうに分けて考えられない出費というのは確かに存在しています。
というより、むしろあいまいでグレーな出費ばかりです。
完全に事業用100%なもののみ経費として計上してはいけないとなると、それはフリーランスにあまりに厳しいと言わざるをえません。
それゆえ、家事按分という仕組みがあります。
事業用が何割で、プライベートが何割でというふうにパーセンテージで出費の何割かを事業用の経費として計上する仕組みです。
たとえば
・家賃
・電気料金
・ガス、水道費
・通信費
・自動車関連費
などは、個人的な住居と事業所を兼ねている場合などは、家事按分で計上する事で、ある一定の割合を経費として計上できます。
結論としては有意義な投資にまわして節税ができるかどうか
可能な限り利益を圧縮し、税金をゼロに近づけるのはフリーランスの戦略的に正しいかどうかという話しですが・・・
これは経営者(フリーランス)によって考え方や価値感も違うので、人それぞれと言ってしまえばそれまでなのですが、
結論・最適解とすれば投入する事業への投資資金が、使うお金以上に多くのリターンを見込めるという確信があれば、積極的に事業へ投資したり設備投資をし、その確信が持てなければ、無駄なお金は使わず控除の活用など、それ以外に出来うる節税をしたうえで、利益はそのままにして誠実に納税するのがベストだと思います。
日本は税金は高いとはいえ、無謀であったり無意味な投資にお金を使ったり、浪費に散財したりすれば本末転倒です。
みんなの声
フリーランスの方もいよいよ確定申告ですね。
利益がでて喜ぶ人。
税金が出過ぎてあせる人。よく高級車の4年落ちを購入すると一括で経費計上出来て節税になるとSNSでみかけますが、夢はでっかくその位になりたいですね😅
夢を語って笑われたら実現してやったればいい🌈✨
— ⭐️まる|人のために生きる起業 (@m_a_r_u_68) February 4, 2024
99%の人は気づいてないから可哀そう。「家賃、光熱費の一部経費」「スタバで仕事すれば経費」「iPhone15も一部経費」月収10万円のアルバイトと月収10万円のフリーランスの主婦は自由度の差が月とスッポン。個人事業主になれば節税もできて一石二鳥。そのためにどうしたらいいかっていう発信をしてます
— まつ🍡夫を主夫にする主婦 (@Omaoma2140) January 30, 2024
フリーランスの利点は
必要経費が使えること。仕事場に使っている自宅の部屋
交通費、駐車場代、携帯代はもちろん
iPhone14まで業務に必要なものは全て経費になるので
設備投資が節税への第一歩 。お金を上手に使えないと損をするので
僕をフォローして、まずは税を知ろう。#まみおの税務— まみお@営業数7,023件 (@mamio_69) September 8, 2022
サラリーマン時代におこづかいでいろんなモノを買うのは贅沢。
フリーランスだと事業の必要経費として利益からマイナスできるので節税(課税対象額を減らせる)にもなる。
同じように買い物してるだけなんだけど。
今年もイッパイ設備投資できました。— DRAGサニー♨️ガレージ@wataru5532 (@wataru5532) November 24, 2021
フリーランスで節税対策をしている人は要注意です!
節税のし過ぎが原因で住宅ローン審査に落ちることがあります。
設備投資などにより収益を少なくすると、事業収益があまりにも少なく返済困難になると判断されて審査落ちします。
3年続けてしっかりと収益を出してから住宅ローン審査を受けましょう。— のぶなが@住宅ローン審査お助け侍 (@nobunagahome) October 22, 2022
むかし『フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。』という本を編集したんですが、そのときに税金というか経費のことで一番びっくりした事実がこれ。
こういう「本当こと」だけを集めた本の改訂版が出てるので、確定申告で心が重くなっている人はぜひ読んでくだされ〜
#確定申告 pic.twitter.com/ZJmvVknYHp— 横田大樹🌗書籍編集者 (@editoryokota) February 16, 2021
確定申告で悩んでるフリーランスへ。
節税になる経費計上のまとめはコレ。 pic.twitter.com/FXBZNCxhBr— かとう士道💰確定申告と節税 (@Kato_Sido) January 17, 2024
社長や、フリーランスになったら経費を使って豪遊できると勘違いされる方がいますが…
節税対策という名分で余計な出張や会食、物品購入をしていたら、間違いなく資金はショートします。
経営で大事なのは、キャッシュを守ること。
社長マーケティングに踊らされないで!
— てつや@あなたの複業のお供 (@tetuya_888) August 30, 2022
ココだけの話、経費で落ちるからって無駄な買い物をするのはNG。フリーランスが『節税しながらお金を残す方法』は5つ。
①青色申告 65万円
②国民年金保険料 19万円
②iDeCo 81.6万円
③小規模企業共済 84万円
④経営セーフティ共済 240万円これで年間489万円も節税しながら貯金できる。ただし
— ひろせ | iDeCoと老後資金づくりの専門家 (@FP_note) November 7, 2022
この複業ワーク推進メディア「ウィズパラ」を運営する株式会社パラワークス(Wantedly
ページはコチラ)では、優秀なスキルを持つ複業志向を持つ方からのコンタクトを常に募集しております。
デザインスキル・プログラミングスキル・マーケティングスキル・広告運用スキル・ディレクションスキル・ライティングスキルなど必要としているスキルは多種多様。
転職ではなく複業ワークという働き方に興味があるエンジニア・デザイナー・マーケター・ディレクターの方は、ぜひ問い合わせフォームからお声がけください。
ParaWorks社長中村さんの「ウィズパラを運営する僕の”建前”と“本音”」もぜひ合わせてお読みください。思わず連絡したくなりますよ。
この記事を書いた人
山崎岳史
東京都中野区のフリーランスでWeb制作を行っております。
Web制作会社から独立してから、13年が経ちます。
おもにマークアップやJavascriptのコーディング、Wordpressのカスタマイズなどフロント回りの開発が得意ですが、PHPとMySQLを連携させたシステム開発もよく行います。
ビジネス系メディアへの寄稿などライターとしても活動しています。
自分の最大の売りは、即レススキルと誠実さ(自分で言うなw)だと思います。
最近は、フリーランスや複業(複数の生業を持つ)という働き方の素晴らしさに気づき、この新しい時代の働き方の普及活動をしています。
このメディアでこの変化の早い世の中で、いかにすればフリーランスとして活躍していけるか有益な情報を発信していきます。
この記事を書いた山崎岳史個人に仕事のご依頼やご相談、世間話や飲みのお誘いなどがある場合は、コチラまでお気軽にご連絡ください。
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