政府が掲げる「働き方改革」に、副業・複業の解禁および推進が盛り込まれていることは、もう珍しい話ではありません。国として旗を上げることにより、多くの企業が「副業・複業解禁」への一歩を踏み出しやすくなるだろう、と強く願っているわけです。

一方で、政府が提言している働き方改革は何も「副業・複業解禁」だけではありません。今回は、日本にある全企業数のおよそ99%を占める中小企業を牽引する「中小企業庁」が提言している働き方改革に注目していきたいと思います。


兼業・副業を通じた「創業・新事業創出」が日本経済をリードする

今回注目したのは、平成29年3月に発表された「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業研究会提言~ パラレルキャリア・ジャパンを目指して ~」(中小企業庁経営支援部創業・新事業促進課経済産業政策局産業人材政策室)。

全30ページに及ぶ本研究会提言書には様々な施策が盛り込まれており、非常に濃い内容がぎっしりと詰まっています。その全貌としては、国が兼業・副業・複業の促進を図り、パラレルキャリアを望む人や創業したい人の夢を実現させられる社会を作ることや、これらの人たちをあらゆる角度から応援する・応援できる社会(パラレルキャリア・ジャパン)を実現させるという内容。

中でも本研究会提言書は「創業・新事業」に着目をしています。

副業・複業を通じた働き方改革を推進することで、企業、従業員それぞれが創業・新事業に対して”積極的に挑戦するような企業文化・社会”が実現しやすくなる、という考え方です。

新事業創出や創業により「産業界に新陳代謝を生みだす」

副業・複業を解禁すると、企業として新事業の創出が生まれやすくなるだろうと、この研究会提言書には記載されています。また、創業(起業)が活性化される事も新たな需要と雇用が創出されるだろうと訴求しています。

つまり、新規事業創出・創業(起業)は、これからの日本経済の活性化にとっては極めて重要であるということです。

その裏付けとして、日本再興戦略にあるKPI(重要業績評価指標)に「開業率が廃業率を上回る状態にし、開業率・廃業率が米国・英国レベル(10%台)になることを目指す」ことが盛り込まれています。

また、補助指標には「起業活動指数1を今後 10年間で倍増させる」ことが目標として掲げられています。

これはつまり、新陳代謝により「より社会にとって良い存在(企業や団体あるいは個人)」を増やしていこうというものです。副業・複業の推進という観点でいえば「従来の考え方や働き方」ではこの新陳代謝は生じにくく、新たな知識や経験を積んでこそ、社会にとってより良いものが生まれる。だからこそ、企業は副業・複業を解禁させ、一人ひとりがより成長できる環境を作りなさいと推奨しているといえます。

なぜ創業(起業)が推進されているのか

一言でいうと「雇用が生まれやすい」からです。

中小企業白書 2011 年版によると、2006~2009 年において、新規開業所は全事業所の 8.5%で、全雇用の 37.6%を創出していると報告されています。

つまり、新規雇用を多く生み出す企業は、既存の企業よりも新規開業企業の方が期待をもてるということです。

そのため、創業(起業)を促進することは、新規雇用創出に繋がり、結果的に日本経済の活性化に大きく寄与するだろうと考えているわけです。

しかしながら、起業活動指数については3.8%(2014 年度)と、理想とする数字に達していないのが現実。この数字は、OECD 諸国の中でも最下位です。

また、「創業無縁層」という言葉もこの研究提言書には出てきます。「創業無縁層」とは、創業に関心がなく、ネガティブに捉える傾向がある層のことを示していますが、日本はこの「創業無縁層」の割合が70.9%と欧米諸国と比較して非常に高いことが報告されています。つまり、創業(起業)に対する意識改革、起業環境の見直しが不可欠であり、むしろ急務な状況であるといっても過言ではないでしょう。

国が副業・複業を推進する理由には「創業(起業)」への望みがあった

決して、創業(起業)する数が増えるだけで、日本経済がより良くなるわけではないでしょう。しかし、間違いなく起こるのは前述してきた「新陳代謝」。この新陳代謝は、当然ながら「企業対企業」「個人対企業」「個人対個人」と、あらゆるシーンで生じることでしょう。

これからは、自分自身の経験やスキルを、1つの会社だけで発揮するのではなく”社会全体で発揮する”という観点が、新しい働き方を後押しし、強いては日本経済の成長を実現できるのかもしれません。

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